意思のある包丁

死ぬまで 絶対

例えばの話ですが

「ねえお兄さんみかはどこへいくの」

サウジアラビアって知ってる?」

「ううん、知らない」

サウジアラビアは石油とかがたっくさんある国でね、サウジアラビアの人たちは日本人が可愛い可愛いって、日本人が大好きなんだ」

「そうなんだ」

「だから君は今からサウジアラビアに行くんだよ」

「嫌だよ、」

「でももう決まったことだから」

「苦しいよ出してよ」

「でももう荷物だからね」

 

「着いたの?」

「そうだよ」

「日本に帰りたいよ、嫌だよ」

「また殴られるのに?」

「帰りたいよ、お兄さんはここにいるの?」

「お兄さんは帰るよ」

「なんで?ここにいて、みかひとりぼっちは嫌だよ」

「1人じゃないよ ここには新しい家族がいるからね」

「行かないでお兄さん」

 

「…お兄さん?いるの?行かないでよ」

「帰るよ」

「じゃあみかも日本に帰りたいよ」

「もう帰る場所はないんだよ」

「なんで?日本に帰りたい、パパとママに会いたいよ」

「うーん、じゃあみかちゃんはさ、買い物ってしたことあるかな」

「あるよ、パパのタバコを買うの」

「じゃあさ、その買ったタバコはさ、返せるかな?お店の人にタバコを返したことある?」

「ない」

「そうだよね、一緒だよ」

「何が一緒なの?」

みかちゃんはもう買われたの、買ったもの返しちゃダメだよね」

「わかんないよ」

「じゃあ、ペットショップでさ、犬でも猫でも買ったらさ、それは返してもいいのかな?もう家族だよね?」

「…うん」

「そうだよね」

「でもやだよ日本に帰りたいよ、パパとママに会いたいよ、お兄さん、連れて帰ってよ」

みかちゃんには新しい家族がいるでしょ」

「嫌だよ、パパとママに会いたいの」

みかちゃんにはウサギちゃんの方が分かりやすかったかなあ、ウサギさん家族になったのにペットショップに返すのかな」

「ウサギ、ウサギにも会いたいよ」

「だからそれができないんだよ」

「じゃあお兄さん、行かないで ここにいる人たちは言葉もわからないし怖いよ」

「お兄さんはペットショップの店員さんと一緒。新しい家族のもとにペットを届けたから帰るよ。」

 

「お兄さん、あのね、最近みんながみかのお腹をなでるんだよ」

「…」

「嬉しそうにお腹撫でて、話しかけるの 怖いよ 日本に帰りたい」

「だからそれはできないよ」

「なんでみんなお腹を撫でるのかな、パパとママ、ウサギも、みかのこと心配してるよね?」

「あのね、もう帰る場所なんかないよ」

「お兄さん、お兄さんもお腹撫でるの?あの人たちと同じことするんだね」